ヒント8 - 昇降設備の設置

既存の住宅にホームエレベーターや、階段昇降機を設置するには、役所等への届出や、建築士による建物の構造強度の確認などが必要なのを知っていますか?

ホームエレベーターやいす式階段昇降機、段差解消機は、建物の一部として建築基準法上の規制を受ける建築設備です。これらの設備を設置する場合は、建物の構造強度上の安全性や、建築基準法の適合性について必要な図面・書類などをそろえ、事前に役所に相談する必要があります。
その際、建築確認申請書の図面内容と現在建っている住まいの状況が一致していることを示す必要があるため、「建築確認申請書」と 「検査済証」が必要となります。なお、検査済証とは、その建物が確認申請通りに建てられていることを証明するもので、建築工事が完了した際に検査を受けて問題がなければ交付されます 。

昇降設備の設置

事例1:既存住宅にホームエレベーターを設置

Bさんの住まいは、木造2階建て。年々持病の膝痛が悪化してきて、具合の悪い日は、2階に上がるのがとても苦痛になります。そこでホームエレベーターをつけて気軽に2階と行き来したいと、知り合いの建築士に相談しました。
エレベーター設置には事前に役所に相談する必要があるため、確認申請の図面や必要書類を調べてみました。すると、検査済証を取得していない上、何度かの小規模な増改築の結果、確認申請の図面と現在の住まいの状況に違いがあることも判明したのです。役所と事前相談しながら計画を進めるには、現況建物が構造安全上、法律上適合していることを証明する必要があり、かなりの費用がかかることが予想されたので、EVの設置をあきらめました。そして寝室を1階に移すなど、毎日の生活に必要な空間を1階にまとめるリフォームを実施。2階へ行く頻度を少なくして、以前より膝に負担がかからない生活ができるようにしました。

【ポイント】
小規模なリフォームであっても、場合によっては確認申請など、法規上の手続きが必要な場合もあります。新築や増改築の際は、将来のリフォームのためにも建築確認申請をし、完成時には面倒でも検査済証を取っておきましょう。また、防火地域や準防火地域外の建物で、増築面積が10m2以下の場合など、確認申請の提出が不要なリフォームもありますが、建ぺい率など、法規上の決まりを守って工事を行ってください。(解説「役所への届け出」も参照して下さい。)

既存住宅にホームエレベーターを設置

事例2:階段にいす式昇降機を設置

Cさん宅は、2階にLDKがある木造2階建て。高齢となった母親と同居するにあたり、母親も自由に2階に上がれるようにしたいと考え、ホームエレベーターか、もしくはいす式階段昇降機の設置を検討。面積的なこと、予算、工期的なことを考え合わせ、いす式階段昇降機を設置することにしました。
いす式階段昇降機はホームエレベーターと同じく建築基準法上の建築設備に含まれますので、事前に役所へ相談にいきました。Cさんの建物は新築時の検査済証を保管しており、現状も変わっていなかったので、適法であることが確認できました。ただし、昇降機をとりつけると、階段幅が建築基準法で定める最低の寸法を確保することができなくなります。そこで、構造・使用形態による緩和基準を満たす機種を選択し、設置することにしました。

【ポイント】
役所の判断によって、あるいは建物の構造規模によって、確認申請が必要な場合とEV設置の報告が必要な場合とがありますので、役所の事前相談で確認しておきましょう。

階段にいす式昇降機を設置
段差解消機
ページの先頭へ