一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会会長賞
時を重ねる家 −10年で住み継ぐ暮らしの提案−
| 設計会社 | (株)番場建築 |
|---|---|
| 施工会社 | (株)番場建築 |
| 所有・建方形式 | 持家一戸建 |
| 構造 | 在来木造 |
リフォームの動機/設計・施工の工夫点など
本計画は、住まい手と工務店の双方が三世代にわたり受け継
いできた住宅を、子育て期の10年に合わせ改修し、その後は
単身の親族へ住み継ぐことを前提としたものである。室構成は
重度難聴の長男に配慮し、家族の気配や表情が伝わりやすい
ワンルームに近いものとした。暮らしの起点となる玄関には、
子どもたちの視覚学習を支える本棚やベンチを設けている。
将来の単身居住に向け減築も検討したが、新潟の気候や外構
管理の負担を考慮し建築面積は変えない計画とした。内部の
快適性と安全性を高めるため断熱性能向上と構造補強を行っ
ている。また、県産材や流通が安定した汎用金物部材を積極的
に採用し、傷んだ部分を容易に交換できるメンテナンス性にも
配慮した。住宅は建てて終わりではなく、ライフステージに合
わせて適切に更新しながら住み継いでいくべきである。そのた
めには変化に寄り添う工務店の存在も欠かせない。10年で家
を住み継ぐ今回の試みは、子どもが独立した後などの個室余り
や空き家問題といった現代の住宅課題に対する1つの提案で
あり、住宅と地域工務店が共に時間を重ねていく地方の住まい
の可能性を示すものである。
| 性能向上の特性 特に配慮した事項 |
・耐震補強 (太鼓梁、耐力面材、筋交、接合金物など追加) ・断熱等級5 (天井:高性能GW20K-200�弌∧鼻Ч眄�能GW36K-105�弌⊂押Д�ネライトフォーム90mm充填・アルゴンガス入りLow-E複合サッシ) |
|---|
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
| 所在地 新潟県五泉市 | 新築竣工年 1968年 | 築後年数 58年 | 施工期間 180日間 |
| 該当工事床面積 177.71 �� /総工事床面積 177.71 �� | 該当部分工事費 1,000〜2,000万円未満 /総工事費 1,000〜2,000万円未満 | ||
| 在来木造 | |||
| 居住者構成 15 〜 39 歳: 2人 / 14 歳以下: 2人 | |||
講評
本作品でまず感じたのは、この家が歩んできた時間とこれからの時間
を丁寧につないでいることである。数年前に空き家となった親族の家を、
現在は子育て世代が住み、10年後には定年退職した親族が戻って暮ら
す。長年にわたり地元の工務店が維持管理してきた建物に、現在と将来、
それぞれ異なる世代の暮らしを一つの住まいに描き込んだ計画は、これ
からの空き家活用を考えるうえでも興味深い。
室内に入ると、広々としたパブリックゾーンと高い天井、ハイサイドラ
イトからの光、間接照明、樹種の違いによる木材の表情が美しい明暗を
つくり出していた。空間は端正でありながら温かさと豊かさを感じられる。
重度難聴の子どもがいる家族のため、どこにいても互いの気配を感じら
れる構成としたことは本作品の重要な特徴であるが、広い玄関土間やス
ムーズな動線、視線のつながりは、どの生活者にとっても魅力的なつくり
といえよう。特に玄関土間では、来訪者から「本を借りたい」、子どもから
「学校みたいだね」といった声も聞かれるそうで、日常の場であると同時
に趣味の会などの交流の場となり、人と人をつなぐ場所として育っていく
様子が想像できる。
性能向上にも確かな取り組みが見られる。耐震診断をもとに梁、耐力壁、
筋交い、接合金物などを補強し、天井・壁・床の断熱や複合サッシの採用に
よって、かつて寒さや虫の侵入が課題であった住環境を改善している。エ
アコンによる冷暖房のみで過ごすことができ、天井ファンによる暖気の循
環などデザインと性能が一体となり住み心地の満足感につながっていた。
さらに興味深いのが、所有者が構造・断熱など建物にかかる費用を負
担し、現在の居住者が内装・設備や家具、外構など暮らしに関わる費用を
負担する仕組みである。所有と居住を分けることで双方の負担を軽減で
きる合理的な方法であり、空き家を住み継ぐ際の一つのモデルとして参
考になる。一方、このようなケースでは現行の助成制度を利用しにくい面
もあり、今後の空き家活用を促すためには制度や法の整備も期待したい。
設計者であり居住者でもある施主は、五泉市産材を山から伐採すると
ころから始め、地域の職人が加工・施工を担う「地材地建」の考え方で取
り組んだ。黒く扱いにくいとされる五泉杉をあえて用い、その個性を味わ
い深い表情として外壁などに取り入れ、押縁仕上げにより将来の修繕が
しやすい仕組みとしている点なども評価できる。施工には長い期間を要
したが、その過程には施主夫妻も参加している。自ら手を動かし、ともに
作り上げていく姿勢からは、この家を大切に育てていこうとする思いが
感じられた。
人口減少により空き家が増え、地域の工務店や職人が減少する状況が
社会問題となるなか、「建てたものは責任をもって支え、住み継ぐ」ことを
本作品は具体的に示した。家族の記憶と現在の暮らしを受け止め、次の
居住者へとつなぐとともに、地域の木・人・技術をつなぐリフォームの可
能性を感じさせる好例として、住宅リフォーム推進協議
会会長賞にふさわしい作品と評価した。

















