第43回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

入賞者一覧 概要

国土交通大臣賞

昭和小路のココナガヤ

設計会社 (株)山本嘉寛建築設計事務所
施工会社 (株)城南組
所有・建方形式 賃貸連続建
構造 在来木造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

京都市東山区六原は町家や寺社が軒を連ねる地域です。狭小な路地や老朽化し た木造家屋、空き家の増加、民泊・ゲストハウスへの転用、観光客によるプライバ シー侵害など多くの課題に協力して取り組む住民活動も活発です。地区には「昭 和小路」と呼ばれる狭い路地があり、戦前に建てられた長屋に今も多くの人々が 暮らしています。その多くを維持管理する事業主は、インバウンド向けではなく、あ くまで地域住民とつながる街区として昭和小路を活性化させるため、2017年より 段階的に長屋住戸のリノベーションを行い、気鋭のデザイナーや料理教室を営む 親子などバリエーション豊かな住み手を呼び込む事に成功し、長屋の年齢層も若 返りつつあります。2023年、地域活動の核となる拠点をつくり人々の交流を促進 するために、路地奥に長年放置され廃虚化していた長屋を一棟改修することにな りました。建築基準法上の可否、事業収支、地域との関係性などを多角的に検討し、 小商いが出来るメゾネット賃貸住戸が3 つと、多目的に利用できるコモンスペース が立体的に組み合わさる間取りが導き出されました。建物の履歴を検証する中で、 この建物が通り庇と出格子のある一般的な京町家ではなく清水焼の倉庫としてつく られた「倉庫長屋」であったことが判明し、新築時の意匠を尊重しつつ間取に応じた 修景を行うことで、和洋が混交した戦前の手工業の匂いのする独特な外観となりまし た。性能面では限界耐力計算による耐震改修を行うと共に、軒裏・開口部の防火改修 を行い、将来に渡って安全・安心に使うことが出来る建物にアップデートしました。

性能向上の特性
特に配慮した事項
地域にとっていかに親しまれやすく継続性のある計画とできるか。
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 京都府京都市東山区 新築竣工年 1928年 築後年数 98年 施工期間 180日間
該当工事床面積 198.74 �� /総工事床面積 208.675 �� 該当部分工事費 3,000万円以上 /総工事費 3,000万円以上
賃貸連続建
居住者構成 15 〜 39 歳: 3人
講評

次々に町家が取壊されマンションに建替わったり、町家が残される場 合でも元々の地域的な文脈とは無関係なシェアハウスや民泊のような用 途ばかりに偏ったりという京都都心部の実状に対して、もう何年も人の出 入りがなく、倉庫として劣化するにまかされていた築年数90年超の木造 長屋形式建物を、残すべき部分を丁寧に見分け、他は大幅に更新するこ とで、職住一体の3戸の併用住宅長屋として再生させ、地域に新しい暮ら しと人の関係を埋め込もうとした挑戦的なプロジェクトである。

施主は、この敷地を含む近隣の「昭和小路の長屋」を管理、運営する事 業者であり、祖母から受け継いだ木造長屋を、その佇まいを維持しなが ら、段階的に改修し続けている。清水寺に近く、観光客相手の商業施設や 宿泊施設になりそうなところを、敢えて地域コミュニティの活性化を目指 して、職住一体の住居への再生を企図した。

 そうした事業者の企ての実現にあたっては、京町家再生に取組んで いる地元金融機関の支援が大きな役割を果たした。建築事業費だけでな く、入居を希望する若い住み手とのマッチングという面でもこの金融機 関の貢献が見られた。その結果、1階小商いスペースと2階住居スペース の組合せ3戸とコモンスペースが新たに誕生した。1階では、ネイル・ アート、マッサージ・リラクゼーション、衣料品のアトリエ兼ショップが地 域の人々や通りがかった観光客を迎える。その経営者それぞれにお話を 伺えたが、いずれも満足度が高いのが印象に残った。

法規的には、この敷地の面する昭和小路は建築基準法第42条3項道 路で幅員2.7mが確保されているが、単体での建替えが難しかったため、 役所との協議を重ね、防災広場の確保と防火改修を図ることで大規模修 繕が可能になった。また、構造面では、長年放置され廃屋同然だった元倉 庫の建物だが、限界耐力計算を用いて耐震性が新たに確保された。具体 的には、腐朽した木材を取去り、大幅に新規の構造体を挿入するとともに、 既存土壁に加えて外周部を「荒壁パネル」で補強している。出入口の木製 引戸の意匠を崩さないよう、内部側にさりげなく防火シャッターが仕込ま れている等、意匠上の肌理細かな配慮も見られる。

このプロジェクトでは、事業者、設計者の決断を、京町家の再生を手掛 けてきた大工の「できますよ」の一言が後押ししたと伺った。実際、施工に あたっては、担当した大工の能力の高さが十分に活かされ、それによって プロジェクトが成立した側面もある。また、施工段階では、「塗り壁ワーク ショップ」という形で地元大学の参加も実現できたし、それぞれの長屋の 入り口廻りに入居者がそれぞれに独自の装飾を施すこともできた。

以上のように、長年放置されこれほどまでに劣化した建物であっても、 建替えでは実現できない価値を十分に実現し得ることを証明して見せた 点は、国土交通大臣賞に相応しいものとして高く評価できる。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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