一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会会長賞
なりわいながら暮らす家|参道沿いの鉄骨住宅を、母娘の夢を叶えるカフェ&サロン併設の住まいへ
| 設計会社 | (株)美想空間 |
|---|---|
| 施工会社 | (株)美想空間 |
| 所有・建方形式 | 持家一戸建 |
| 構造 | 鉄骨造 |
リフォームの動機/設計・施工の工夫点など
施主は母娘でカフェとサロンを開く夢を抱いていたが、住居と店舗を持つ際
の「二重コスト」や賃貸店舗の改修制限が障壁となり、開業を断念しかけてい
た。そこで、わたしたち美想空間は、住宅ストック(空き家)となっていた鉄骨
住宅を活用し、コストを抑えて夢を叶える「職住一体型」の暮らしを提案した。
設計で最も重視したのは、店舗の開放性と住宅のプライバシーの両立だった。
既存玄関の位置を見直し、階段を掛け替えることで来客動線と住居動
線を完全に分離。1階店舗は鉄骨造の構造特性を活かした間仕切りの
ない大空間とし、天井躯体現しと白塗装により明るく開放的な空間へ
再生した。一方、2階住居は既存を活かし、最小限の改修に留めた。
このようにして、限られた予算を、店舗機能の充実や法令対応へ重点配
分する、メリハリのある予算計画とした。
また、この場所は地元・恩智神社の参道沿いという立地も相まって、開
業後は参拝客や地域住民が自然と集う交流拠点となっている。
さらに、ロゴやグッズ制作をきっかけにクリエイターとの連携が生まれ、農家
との新たなつながりへと発展。関係人口の創出や地域内の経済循環に
も寄与している。本計画は、既存住宅を活用した「住む」と「働く」の新しい
モデルとして、小規模開業のハードルを下げながら、空き家活用と地域
コミュニティ形成を両立する『持続可能な店舗併用住宅』の事例となった。
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
| 所在地 大阪府八尾市 | 新築竣工年 1988年 | 築後年数 38年 | 施工期間 180日間 |
| 該当工事床面積 89.35 �� /総工事床面積 89.35 �� | 該当部分工事費 2,935万円 /総工事費 2,935万円 | ||
| 持家一戸建 | |||
| 居住者構成 40 〜 64 歳:1 人 / 15 〜 39 歳:2 人 | |||
講評
大阪の神社の参道が二股に分かれる三角状敷地に建つ、鉄骨造の2階
建ての物件を、「職住一体型」=住居兼店舗にリフォームした事例である。
住まわれているのは、お母様と娘さん2人の3名。1階を店舗スペース
(カフェとヘッドスパ)、2階を居住用スペースとしており、90�崋紊吠賁�3
人が暮らし、商売をし、地域とつながりながら暮らす。そんな人生の要とも
いえる「居場所」を形成している。
もともと、娘さんがカフェを営むことを夢として物件探しする中でこの
物件と出会ったのだが、見学に来たところ、参道側の玄関から左右に振り
分けられたスペースがあり、入り口を2つ持てるというこの物件の特徴か
ら、ヘッドスパサロンというもう1つの夢を叶えることとなった。
1階は入って左側が広いカフェ空間、右側がヘッドスパサロン。カフェス
ペースは鉄骨をあらわしにし、高さを出して開放感を演出している。全体
的に白を基調として、洗面台などはかわいらしさにこだわりつつも、男性も
入りやすいよう、甘くなりすぎないような空間づくりを意識したという。
2階のプライベートスペースは、ミニマルな機能性を有している。水回り
がなかった2階に、浴室・トイレ・洗面・キッチンをコンパクトにつくり、排水
の傾斜をつくるためキッチンは1段あがる形となっているが、それもまた
空間の仕切りに一役買っている。プライベートスペースという観点では、ま
だお若い娘さんたちが将来は独立されることも考慮に入れ、個室をあえて
つくらず、ベッド2台はカーテンで仕切れるようにするなど、つくりこみすぎ
ないフレキシビリティを確保している。
また、職住一体型ということで、参道の裏手にあった勝手口を住居用玄関と
して、そこにつながる階段を3段の架け替えによって方向を変えることで、パ
ブリックとプライベートな空間の分離を実現している工夫も印象的であった。
更には女性3人ということで、防犯の観点から1階にはシャッターを設置
したり、プライバシーの観点としてはハイサッシにして外からの視線を遮る
よう工夫するなど、細部へのこだわりも感じられた。
当然ながら、住居と店舗を持つことは二重コストになるため、夢を断念
せざるを得ないケースも多い中、この物件との出会いとプランニングによ
り、3,000万円以下というコストで実現できているのは、リフォームの醍醐
味を感じさせる。
地元の方が長らく住まれていて、転入者が少ない地域の特徴から、当初
は珍しがる向きもあったが、景観条例も理解して外壁を白くして街並みに合
わせる、緑をたくさん植えるなどの工夫で、地元の方にも愛されるスペース
になり、カフェのオープンから2年が経ち、地域の交流にも一役買っている。
三角形という変形性の強い土地であることから、あまり好まれる宅地と
は言えないなか、立地・形状・大きさと施主の夢がリフォームによってうま
くかみ合った好例と言える。
リフォーム瑕疵保険に加入している点も評価し、一般社団法人住宅瑕疵
担保責任保険協会会長賞にふさわしいものといえる。
















