第42回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

入賞者一覧 概要

公益財団法人 日本住宅・木材技術センター理事長賞

鎌倉の格天井

設計会社 Inoue Yoshimura studio(株)
施工会社 (株)坂牧工務店
所有・建方形式 持家一戸建
構造 在来木造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

鎌倉にある空家を現代的な和風の週末住宅として再生した。
丁寧に造られていた和風の外観は、そのまま継承し、構造、断熱、 換気共に現代の住宅に劣らない性能へと改修した。暗く間 仕切りの多かった内部は、天井を取り払い、45�亞僂量攤爐� 相欠きした格天井を既存の梁組に接合することで水平剛性を補 強しながら、天窓や外周部からの光を部屋全体に届けている。
本工事は施主である大工とその仲間が施工するため、仕上げ や家具造作の殆どを大工工事とし、費用を抑えながらも、格 天井を始めとした手間と技術を要するデザインを多く採用し、 昨今減り続ける造作のできる大工職人の育成や大工技術の継 承を意図した。また、本住宅は週末住宅のため、空いている 期間を地域NPO活動と連携し開放することとした。元々目線 より高かった塀は高さを下げ、周囲の街とのつながりを持つ改 修とし、閉じていた入口も広く開口している。本住宅改修は、 鎌倉に根付く住宅文化を新しい形で再生した事例として積極的 に公開し、それと共に、若い世代へ技術職への訴求を行うこと も意図する。住まいと地域活動拠点となる、新しい住宅の可能 性を切り開くことを願っている。

性能向上の特性
特に配慮した事項
大工・職人技術の継承/数寄屋の寸法体系を残しつつ現代的な内装に昇華/竣工後の地域への開放を考慮した計画/構造材と断熱材の新設
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 神奈川県鎌倉市 新築竣工年 1988年 築後年数 38年 施工期間 450日間
該当工事床面積 96.26 �� /総工事床面積 96.26 �� 該当部分工事費 2,000〜3,000万円 /総工事費 2,000〜3,000万円
在来木造
居住者構成 40 〜 64 歳: 2人 / 15 〜 39 歳: 1人
講評

鎌倉駅に程近く、古い路地や寺社が点在する閑静な住宅街に建つ空き 家を、和風の週末住宅に再生したプロジェクトである。施主は工務店を 営む大工で、近くの現場で工事を行なっていたところ、たまたま設計者 を通じてここが売りに出されているのを知り、その佇まいに一目惚れし て購入を決断したという。

建物は築38年と比較的新しかったため、構造躯体や外装を活かしなが ら、その数寄屋風の丁寧な仕事を残したいと考えた。施主の工務店でも 最近は純和風の住宅を手掛けることが少なくなり、そもそも和室を見た ことがない若い人も増えていて、大工技術の衰退に危機感を持っていた。 そこで社員大工の育成を兼ねて、手刻みに長けた大工の父監修のもと、 職人の手仕事にこだわった素材と技術でリフォームを行うことにした。

特に象徴的なのは、天井を覆い尽くす格天井ルーバーである。平屋の 住宅はどうしても中央部が暗くなりがちだが、天井を取り払って既存天 窓からの光を家の隅々まで届けると共に、一尺五寸ピッチで対角に組ま れた相欠き(*)格子を魅せることで、従来の和風住宅にはない開放感を 生み出している。

構造的には外周壁と屋根面を構造用合板で補強しながら、この格子も 水平剛性の確保に寄与している。高い精度が求められる木材加工にもか かわらず、その苦労を微塵も感じさせずに納めているところは技術力の 証だろう。またインテリアでは尺モジュールに基づいて壁や欄間の木割 りを行いながら、新たに挿入した土間空間の50角タイルに合わせた緊張 感のあるデイテールは、伝統だけではない新しい和のスタイルを提示す るとともに、住まいとしてだけではなく、店舗やカフェ、イベントなど にも活用可能な空間となっている。外構計画では、家を囲んでいた高い 塀を腰高までカットし、門扉も撤去して前庭とするなど、開放感を高め ながら街との繋がりを生み出す工夫がなされている。

昨今鎌倉エリアでも、街並みを形作っていた和風住宅がどんどん分割 されて建て替えられているという。現在この家は週末住宅やモデルハウス として利用しているが、今後はNPOなどと連携して地域の子どもたちの 居場所に活用する予定で、様々な人に現地を体験してもらいながら、和風 建築や手仕事の魅力を広く伝え、大工の就労希望者を増やすと共に、地域 の住宅文化の保全に寄与したいと考えているとのこと。

ちなみに、本賞は「木材利用や建築・生活文化の発展・継承に資する もの」を対象に、今年度から新設された。審査では単なる木材活用では なく、木造文化の発展・継承に資する作品を求めていたところ、それを 体現する本作品は、公益財団法人 日本住宅・木材技術センター理事長賞 に相応しいものと高く評価された。和風住宅のリフォームではスタイル に目が行きがちだが、技術という観点で見ればデザインの可能性はまだ まだ広がる。この賞をきっかけに、木造建築の新しい可能性を目指す人 が増えることを期待している。

*相欠き:木造接続部において、接合する2部材の材厚の半分ずつを互いに欠き取る技法

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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