第42回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

入賞者一覧 概要

国土交通大臣賞

漆の里焼きサワラの家

設計会社 川島宏一郎建築設計事務所
施工会社 (有)マツモトコンストラクションサービス
所有・建方形式 持家一戸建
構造 在来木造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

木曽平沢の重伝建は現在、特定の建物が崩れ、壊されています。そ れは、気候変動、高齢化、空き家問題等が関わっています。この建物 も19号台風の水害で床が落ちていました。それを解決するため “もったいない”をコンセプトに子育てから様々なライフステージの 変化、他の用途に対応した伝統と未来を見据えた200年先の家を造 るため移住し再生しました。製材所で変色し腐りかけたサワラの板 を焼いて再生、リサイクルの材料を積極的使用、薪ストーブ1台での 暖房、太陽熱温水器を設置し他積極的にゼロカーボンを行いました。 格子のファサ―ドとし周囲の景観と調和させると共に、延焼を抑え 20分間サッシ焼き落ちない様にしました。構造は長手方向の貫は残 し、隣からの影響を受ける短手方向にはMDFのコアとなる部分を 設け、新たな基礎、金物、水平剛性をとり火打も増設しました。断熱、 庭施工は次世代を担う大工の専門校の実習とし職人育成の場とし ました。

性能向上の特性 耐震性能、耐久性能、バリアフリー性能
温熱性能、防音・防犯、空気環境性能
特に配慮した事項 ・家族のつながり・重伝建の文化と伝統の再生・災害復興・専門校生の育成
・温熱性能UA=0.28、・耐震、地震時に逃げ込むコア・格子による防火・県産材
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 長野県塩尻市 新築竣工年 1953年 築後年数 72年 施工期間 300日間
該当工事床面積 242.37 �� /総工事床面積 242.37 �� 該当部分工事費 1,000〜2,000万円未満 /総工事費 1,000〜2,000万円未満
持家一戸建
居住者構成 40 〜 64 歳: 1人 / 15 〜 39 歳: 人 / 14 歳以下: 2人
講評

「設計者であり施主であり住み手でもある応募者が、10年前に漆器作 りを見学した際、中山道沿いのこの地、木曽平沢の街並みに心惹かれ 移住を考えたが、その時は一旦断念した。その後、2019年の台風19 号の水害で取り壊されていく伝統木造建築の状況に危機感を覚え、相 当な被害を受けていた空き家に関して旧知の大工と相談し、再生の目 処が立ったので購入を決断した。それが今回の対象建物である。

木曽平沢は重要伝統的建造物群保存地区に選定されながらも、観光 客も少なく空き家も増加している。ここに、近年増えている中山道の インバウンド客を含む新たな人々に来てもらい、伝統的な漆器の産地 としての魅力を感じてもらえる町として再生するというのが、応募者 の強い思いである。今回のリフォームは、この思いを実現していく上 での第一段階という位置付けである。

まず、街並みと直接関係する街道側の外観についてだが、ヘリテージ マネージャーでもある応募者は、この地区特有の「雁行」を大事にし、 これもこの地区特有の「出し梁造り」を活かして、従前よりも一層街並 みに貢献できる外観を実現している。地場産材であるサワラを活用した 下見板の採用、延焼を抑え20分間サッシが焼け落ちないようにするた めの格子の設置等も、重要伝統的建造物群保存地区としての景観に十分 配慮したものになっている。一歩内部に入っても、既存の木製建具、漆 塗りの和室など、新旧が調和した空間になっていて好ましい。

こうした設計姿勢の大元には、応募者が大事にしている「もったい ない精神」があり、古い建物を残すこともこの精神に基づく行為であ るし、断熱材や設備などにも極力リサイクルの材料を使用している。 先程触れた下見板も、製材所で放置されていたサワラの板を、「もっ たいない」という思いから、焼いて再生したものである。

性能面でもしっかりした向上策が施されている。耐震性向上、断熱 性向上、植栽による日射遮蔽、太陽光熱と太陽光自体の利用の他に、 古い蔵が壊された後にできた庭にビオトープを造成し、大雨に備える 池を創出し、また水路の水を室内の冷房に活かすなど、ゼロカーボン 化に向けても積極的に取り組んでいる。

もう一つの大きな特徴は、応募者が専門学校の教員として大工育成に 関わっており、ベテラン大工を指導者として、今回のリフォーム工事の 現場を学生たちの実践教育の場としても活かした点である。また、リ フォーム工事完成後には、空き家再生・活用の重要性を広める場として、 地域の建築士事務所協会の講習会の場として提供もしている。

リフォーム工事完成後の建物は、自宅及び事務所として使っている が、いずれは1棟貸し形式の宿にする計画で、設計内容にもそのことは 織り込み済みである。今後は他の空き家も買い取り、同様にリフォー ムすることで、今この地区にないレストランを誘致する計画もあると いう。応募者の構想は今回の応募作品1軒にとどまらない。

以上より、本作品は国土交通大臣賞に相応しいものと評価できる。

受賞者voice

第42回住まいのリフォームコンクール 国土交通大臣賞受賞の川島宏一郎建築設計事務所 川島 宏一郎さんにお話しをお聞きしました。

−コンクールへの応募動機をおしえてください。

 長野県では信州健康ゼロエネ住宅という・環境にやさしい・身体にやさしい・ぬくもりの住まいを促進の普及、啓発活動を行っております。私も協議会発足当初から促進部会長を拝命致しまして促進を致してまいりましたが、リフォームでの促進がいまいち進んでいないと感じています。

 また、我が街木曽平沢の重伝建では空き家、高齢化が進み大切な建物が解体されている現状があります。私はこれらの現状を私の所有している建物の改修をきっかけに未来に向けて問題解決の糸口としたい。またそれを日本全国、世界に発信し、街の未来、長野県、日本の未来をよくするためのお手伝いができればと考えております。住まいのリフォームコンクールはその発信の一番有効な手段だと考え応募致しました。

−受賞の感想をおしえてください。

 今回長野県での初めての国土交通大臣賞受賞とても光栄です。しかし受賞して感じることは、長野県のリフォームに関する認知度、意識の低さがより明確になったということです。一部の地元紙を除き長野県のメディアでは取り上げていただけませんでした。また、行政(市町村)での関心度も低く感じられました。

 長野県は都会とは違い山間部と盆地をもつ非常に気温が低い地域が多い土地です。このような厳しい環境の中、中心市街地から外れた地域では人離れがいまだに進み、家を住み継ぐというのが難しい問題となっているのも確かです。新築を求め街の中心地へ。これは長野県に限ったことではないこととは思います。「住み継ぐ」概念、意識変換、また、現代の生活に合った家のありかたを整えること。これらがとても大切ではないかと考えます。

−川島さんにとってリフォームとは?

 とても難しい課題ですが、歴史、風景、住まい方・機能の過去と現代、未来をつなぐものと考えております。設計ではいろいろな意味でのシークエンス、また、機能あるデザインを大切にして設計しております。

−応募を検討されている方へ

 リフォームの形は様々です。是非、あなたの現代から未来へ向かう社会問題への解決方法を示し、メッセージを残していただきたいと考えます。

川島宏一郎建築設計事務所様は、2025年10月に開催された第37回住生活月間中央イベント(長野県)合同記念式典にて、高円宮妃殿下ご臨席のもと、国土交通大臣賞を授与されました。本当におめでとうございます!

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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