一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会会長賞【住宅リフォーム部門】
子供も猫たちものびのび。減築で叶えた「優良」の住まい
| 設計会社 | 住友不動産（株） |
|---|---|
| 施工会社 | 同上 |
| タイプ | 持家一戸建 |
| 構造 | 在来木造 |
リフォームの動機／設計・施工の工夫点など
子供が出来たことを機に手狭なアパートから戸建住宅の購入を検討。希望地域の地価から、新築は予算オーバーであったが性能、デザインなどは妥協したくないという施主の希望をリノベーションで解決できると提案した。長期優良住宅化リフォーム推進事業(子育て世代)も後押しとなり中古住宅リノベーションに決定した。希望条件に合った中古住宅を発見したが建物が隣地境界線より30�僂靴�離れておらず、民法上の規定より狭いため融資が受けられないことが判明した。
融資を受けるために隣地境界線から離すよう減築のプランを提案し、融資の問題を解決した。減築には様々なメリットを生むよう工夫した。減築した部分の基礎を利用したRC擁壁をつくることで隣地からの落雪問題や隣地の外壁ではない景観を生み出つつ、プライバシーを確保できる庭空間を創造できた。また、耐震改修と断熱改修を行い、減築、長期優良住宅化で建物としての資産価値を向上できた。
| 性能向上の特性 | 耐震性能、耐久性能、バリアフリー性能、温熱性能 |
|---|---|
| 特に配慮した事項 | 採光には特に配慮し、３Dを用いて周辺環境を落とし込み日照計画を立てた。また既存基礎は無筋であり破断が数か所あったため添基礎工事を行い耐久性の向上を図った。 |
リフォーム前
リフォーム前後の平面図
物件概要
| 所在地 北海道札幌市 | 新築竣工年 1974年 | 築後年数 48 年 | 施工期間 117日間 |
| 該当工事床面積 146.61 �� ／総工事床面積 146.61 �� | 該当部分工事費 2150 万円 ／総工事費 2150 万円 | ||
| 居住者構成65 歳以上：0 人 ／ 40 〜 64 歳：0 人 ／ 15 〜 39 歳：2 人 ／ 14 歳以下：1 人 ／ ペット 猫4匹 | |||
講評
こんなにおしゃれで使い勝手よくて、耐震も断熱もバッチリのリノベーションがこの金額でできるなら「土地を買って注文建築」という理想を追わなくてもいいんじゃないの？と思わせてくれた作品。
開放感を重視してハイドアを設置したり、南側の建物が３階建てのため、吹き抜けを設けたり、織り上げた天井や壁面に埋め込み照明を設置するなどして内装のセンスが良い。またキッチンから外観も黒でスマートにまとめており、遊びに来た友人が「新築のモデルハウスみたい」というのも頷ける質感である。またネコを４匹飼っており、猫用のトイレスペースや猫が駆け上がれるキャットステップを設置しているが、猫感をそこまで感じない。
さて施主はなぜこの選択肢をとったのかと尋ねた。妻の職場との関係等である程度エリアが絞られている中、土地を買って注文住宅を建築するのは予算的に厳しい状況。そこで中古一戸建て購入にシフトしたという。購入したのは築48年の中古一戸建て。これを長期優良化住宅リフォーム補助金を活用してフルリフォームを行った。その補助金額の250万円を引くと1900万円。コストパフォーマンスがとても良い。土地を購入して注文住宅を建てる総額の２割から３割安で実現している。施主がそのリフォーム会社の従業員であったからこその割引金額ではないか？と勘ぐったがそうではないと。コストのメリハリをつければ延床140�屬如�基礎を含む耐震補強、断熱改修、間取り変更、水回り総入れ替え、外壁通気工法化を含む外装工事を含めてこの金額で行えるとのこと(パネルヒーター、床暖房等の温熱設備は別途。最も昨今の資材高騰は別途織り込む必要があるが。)。
ただこの住宅、ひとつ大きな問題があった。建物の一部が隣地境界から30�僂靴�離れていなかった。民法上最低50�僂藁イ譴討い覆韻譴个覆蕕覆っ罅△海両�態では融資や補助が厳しい状況。また隣家の屋根からの落雪が自分の家の壁に当たるために壁等の痛みも激しかった。そこでこの部分の減築を行うことにした。ここでの工夫と使い方も秀逸だ。減築対象部分の基礎を高くして隣家からの落雪をせき止めた。またその高い壁のおかげで隣家からの目線を切ったプライベート中庭的なものができた。ここを小さな家庭菜園、洗濯物
干し、猫の遊び場、バーベキューと多用途に活用しており、適法のための減築が、結果として生活を豊かにする空間を生み出すことになっている発想は見習いたい点だ。減築により合法の建物になったことで融資、補助金が受けられるようになり、資産価値の向上も果たしている。
昨今の建築費が高騰する中で、新築か長期優良住宅化リフォームかの選択肢を比較することが未来のアタリマエになることを強く望みたくなる、そんな作品である。
