第42回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

入賞者一覧 概要

一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会会長賞

大きなクローゼットと小さな居場所が繋がる家

設計会社 Matter + form ARCHITECTS
施工会社 (株)ハレリノベ工務店
所有・建方形式 持家共同建
構造 鉄筋コンクリート造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

マンション住戸の改修計画。夫婦とこれから生まれる子供が暮らす家を設計した。 モノで溢れる暮らしを許容する機能として、衣類/遊び道具/趣味の小物等、大量 のモノを収納する「クローゼット」を家の中心に配置するところから設計を始め た。クローゼットは収納用途だけでなく、子供の遊び場や学習、趣味のピアノ演奏、 身だしなみの場、動線空間等の機能を有し生活を支えるコア空間として利用される。
ラワンの壁はベニヤ板片面貼とすることで表裏空間の切り替えを強調したほか 壁支持柱を利用したDIYを可能とし、将来の使い勝手に対応した可変性をもたせた。
また、子育てを想定した間取りを検討する上で、家族の適切な距離感を重視し た。テレワーク等が可能な独立性と、家族を見守る繋がりを両立する「つかずは なれずの関係」を目指した。空間を仕切るクローゼットはスラブまで立ち上がら ない入れ子状の構成とし、壁には開口をバランスよく配置することで各室が分 断され過ぎず、家族が互いの気配を感じられるように配慮した。クローゼットに より、モノ(=思い出)が増えるライフスタイルを許容するこの住宅は生活感 をなくすことに躍起になっている現代住宅とは対照的なモデルケースとなる。

性能向上の特性 断熱性能、バリアフリー性能、子育て性能、テレワーク対応、収納量拡大
特に配慮した事項 リビング・キッチン・寝室側壁面に新規断熱材施工。床全面改修による段差解消。
間仕切り壁に開口部を設けることで、空調機数を削減したほか、子育てのための視線が通る計画とした。
大きなテーブル配置によるテレワーク対応。ウォークスルークローゼットによる収容量拡大。
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 神奈川県川崎市高津区 新築竣工年 1974年 築後年数 51年 施工期間 120日間
該当工事床面積 77 �� /総工事床面積 77 �� 該当部分工事費 1,000〜2,000万円未満 /総工事費 1,000〜2,000万円未満
在来木造
居住者構成 15 〜 39 歳: 2人 / 14 歳以下: 1人
講評

第一印象は、奇を衒ったアイデアに映った。地と図が入れ替わった ようなプランで、通常なら隅に追いやられる収納スペースが、まるで 主役の様に中央に置かれている。このプランをどのように住みこなし ているのか、実際に現地を見て確かめたくなった。

設計者でもある施主は、子供が生まれるのをきっかけに広い物件を 探し、築古ながら適切に管理された耐震診断済みのこのマンションを 手に入れた。自分たちの住まい方を冷静に分析し、モノに溢れた暮ら しを許容する機能としてこのプランに辿り着いたという。また子育て には家族の適切な距離感が重要と考え、動線を兼ねたクローゼットを 家の中央に貫通させて、それぞれの居場所が開口から見え隠れする関 係を造り出すとともに、暮らしをバックアップする空間に活用した。

内装はウチとソトを強調すべく、居室部分にはそれぞれ仕上げを施 し、クローゼットはラワンの壁・天井でトンネル状に仕上げられてい た。予算的な都合もあったそうだが、均等に配置された間柱と片面ベ ニヤ貼りで仕上げられた空間はまるで舞台セット裏のようで、下地や 電気配線が現しとなっていて将来の改変を容易にしている。まさに 「暮らし」というステージを支える舞台裏であることを象徴していた。

暮らし始めてさぞ生活感が溢れているものと期待?したが、現地を 訪ねると拍子抜けするくらい整理整頓されていて、モノが溢れるどこ ろか綺麗にディスプレイされていた。ご家族に尋ねてみると、モノが いつも見えることで取捨選択が進み、本当に必要なものだけを選ぶ習 慣が身についたという。何でも容易に手に入る世の中だからこそ、趣 味や個性をオープンにすることは暮らしを豊かにする良いアイデアな のかもしれない。これから子供が大きくなって、様々なモノが増えて くると思うが、この空間がどのように変化していくのかが楽しみであ る。

現地を見て改めて感じたのは、この構成が京都の町家によく似てい ることだ。このクローゼットはまさに「通り庭」であり、ハレとケを 繋ぐ動線でありながら、玄関から庭(バルコニー)に至る光と風の道 となり、暮らしを支える機能空間となっている。

分譲マンションでは、長らく「田の字型」と呼ばれる中廊下型のプ ランが採用されてきたが、往々にして個室が分断され閉鎖的になりが ちである。しかも個室に分散された収納は死蔵品を生み出すきっかけ となり、ひいては個室にモノが溢れ一部屋丸ごと納戸になってしまう ことも少なくない。廊下は効率よく個室を分けるには都合良いが、移 動のためだけに使うのは勿体無い。少し幅を変えるだけで、様々な用 途が生まれることに改めて気付かされた。

設計者自身の住まいということで、多分に実験的な要素が含まれて いるが、移動空間に機能を与え、結果的に暮らしを整える空間になり うることを示した意欲作と言える。モノに溢れた暮らしを逆手に取っ たこの考えは、新たなマンションプランの発明とも言える作品で、住 宅リフォーム推進協議会会長賞にふさわしい作品と評価した。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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