独立行政法人 住宅金融支援機構理事長賞
新旧混成 -旧耐震建物の再生モデル(タウンヴィラ摂津)-
| 設計会社 | (株)今野広大再生建築設計 |
|---|---|
| 施工会社 | (株)ニーズワン |
| 所有・建方形式 | 賃貸共同建 |
| 構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
リフォームの動機/設計・施工の工夫点など
日本の都市には旧耐震の建物が多く残されている。これら建物の改修は、
既存不適格への現行法遡及に伴う高額な費用と築古物件への銀行融資の
困難さの二重の課題に阻まれている。本計画はこの現状を打破し、既存ス
トック活用の促進に資する再生モデルである。主な特徴は以下である。
居ながらの耐震補強と性能確保: 居住下の補強工事を実施し、新築同等の
耐震性能を実現。これにより、住環境を維持しつつ安全性を確保した。
法的・経済的障壁の克服: 新宿区民間初の耐震改修促進法の認定を取
得し、既存不適格を維持しながら増築確認申請と検査済証の再取得。
この結果、改修コストを抑制しつつ、築古建物の資産価値を向上させ、
融資の借入が実現した。
SDGs貢献と維持管理: 廃棄予定だった旧い既存外壁タイルを、施主、施
工者、設計者の協働によるDIY塗装で再活用。単なる材料循環に留まらず、
再生過程への参画を通じて建物への愛着を深め、将来的に専門業者に頼
らないセルフ維持管理を可能にすることで、建物の長寿命化を図った。
| 性能向上の特性 | 耐震性能、耐久性能、安全性能、温熱性能 |
|---|---|
| 特に配慮した事項 | 袖壁、既存外壁増打ち及び鉄骨柱の補強、開口閉塞、軽量化によるIs値0.6以上の耐震性、躯体補修による耐久性、各階避難器具設置による避難の安全性を確保した |
リフォーム前後の平面図

物件概要
| 所在地 東京都新宿区 | 新築竣工年 1973年 | 築後年数 52年 | 施工期間 210日間 |
| 該当工事床面積 1334.55 �� /総工事床面積 1334.55 �� | 該当部分工事費 3,000万円以上〜 /総工事費 3,000万円以上〜 | ||
| 賃貸共同建 | |||
講評
作品名である「新旧混成マンション−旧耐震建物の再生モデル」と
いう名のとおり、築年数50年を超える旧耐震の賃貸マンションについ
て、居住させながらの耐震改修リフォームにより建築物を再生した事
例である。
東京都新宿区にある賃貸マンションは現オーナーの両親が1973年に
建築したもので、今般1階テナントが退去したのをきっかけに、これ
までに実施した排水立て管の取り替え、空き室になった住戸のスケル
トンリフォームを活かしつつ、取り壊すことなく適法に再生できない
か、類似事例などを調査しながら検討していた。そんな中、本来であ
れば価値がなくなるものに再度価値を与え再生することを意味する
「アップサイクリング手法」を提唱する設計者に出会い、今回の耐震
改修リフォームを決意した。
新宿区と2年半もの調整を経て、新宿区民間初の「建築物の耐震改
修の促進に関する法律」に基づく認定を取得し、「既存不適格建築物
における増築等の確認申請」も併せて行い、耐震面や防災面について
現行法への遡及対応を行うことで検査済証の再取得を実現した。耐震
面では、不要な既存RC躯体の解体による軽量化、既存RC壁の増し
打ち、鉄骨柱補強などを行いながらIs値0.379から0.625と新築同等
の耐震性を確保した。また、外壁の増し打ち補強を打ち放し仕上げに
することで建築物のアクセントとして新たな象徴となっている。現行
法に遡及するために、窓先空地を移動し、そこに至る開口部の位置や
大きさの変更、共用階段の手すりの設置、避難器具や竪穴区画の是正
をするなど多くの制約のある中対応している。これらのリフォームを
居住しながら実施することで継続した賃料収入も可能となり、建て替
え費用もかからず、工期も短縮できることから建築費も圧縮された。
粉砕した廃棄予定のタイルを塗装材に混ぜ再生材として活用し、建物
に愛着を持てるよう施主・施工者・設計者の子供達も参加する「塗装
ワークショップ」も開催した。
マンションはよく2つの老いの問題に直面していると言われている。
築40年以上の分譲マンションストック数も20年後には約480万戸に増
加すると言われている。分譲マンションと賃貸マンションでは背景や
住み手の違いなどもあるが建築物を再生し価値を維持していくという
観点では同じ事が言えるのはないだろうか。既存建築物を再生するこ
とで後生に建築物を受け継ぎ、社会的にも問題になっているマンショ
ンの老いに対する再生方法の一つの考え方として評価でき、社会的な
貢献も高いことから独立行政法人住宅金融支援機構理事長賞に値する
すばらしい作品である。












