第40回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

入賞者一覧 概要

一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会会長賞【住宅リフォーム部門】

「北山の家」〜祖父の想いを繋ぐ古民家リノベーション〜

設計会社 松本設計
施工会社 (株)江田建設
タイプ 持家一戸建
構造 在来木造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

建て主は病気になった祖父を看病するため、福岡から祖父の家に移り住んだが、看病も虚しく、祖父は他界してしまった。
祖父と暮らすうちに、愛着が沸き、祖父が建てた家を住み継いでいきたいという想いに至り、リノベーションの相談を受けた。建物は山を背にして、谷側に玄関、和室など表の顔が並ぶが、方位としては、西向きであり、酷い西日に悩まされていた。本来開くべき方位である南側は床の間・仏壇が並び、日中でも電気が必要なぐらい、どの部屋も薄暗く、夏をむねとしてつくられた古民家は、冬は山の厳しい寒さで耐え難いものであった。リノベーションに際し、 建て主からの要望は、冬の寒さを軽減すること、今あるものを活かしたいという2点だった。
床・壁・屋根をしっかりと断熱し、開口部も樹脂サッシとすることで、熱的なバリアーが無くなり、開放的なプラン構成が可能となり、薪ストーブを中心にLDK、和室がひと繋がりとなる空間構成とした。丸太梁や再利用した建具、建て主がリメイクした家具など、新しいものの中に古いものが混在する、温故知新を体現する心地良い住まいとなった。

性能向上の特性 温熱性能、耐震性能
特に配慮した事項 無断熱から全面的に断熱改修を実施し、UA値:0.53まで向上させた。上部構造の耐震化に加え、基礎新設により基礎と構造の一体化を目指した。
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 佐賀県佐賀市 新築竣工年 1960年 築後年数 63 年
該当工事床面積 157.02 /総工事床面積 157.02 該当部分工事費 2,600 万円 /総工事費 3,300 万円
居住者構成 65 歳以上:1 人 / 40 〜 64 歳:2 人 / 15 〜 39 歳: 人 / 14 歳以下:3 人 / ペット  匹
講評

佐賀県北部の山間に立つ、築63年の古民家のリフォームである。病気になった祖父の看病のために福岡から移住した施主家族が、祖父が亡くなった後の住まいを住み継ぐことを決意。建て替えを勧める業者もなかにはいたが、家を残したいという施主の思いに寄り添ってくれる設計者に出会えたことで、計画が進んでいった。この設計者は、リフォーム前の建物インスペクションも行っている。

敷地の東側には山が控えている。この山を背に、もとの建物は西向きに大きく開いていたため、ひどい西陽に悩まされていた。そこで、開口部の配置を見直して南側に開く間取りとし、床・壁・屋根に全面断熱を施すことで、温熱環境の抜本的な解決を図った(サッシは樹脂製にした)。底冷えがひどくて耐えられなかった冬も、ほとんど薪ストーブひとつで快適に過ごせるようになったという。新しい家の感想を施主に聞いたところ、「快適になってびっくりした」との第一声が返ってきた。また、当初の建物は石場建て(*)だったため基礎を新設し、上部構造も耐震化した。これらの性能向上により、長期優良住宅の認定を受ける建物に仕上がっている。

耐震壁を外周部に固めたことにより、内部ではリビング・和室・ダイニングがひとつながりになる伸び伸びとしたプランニングが可能となった。和室の天井は既存のままだが、リビングの天井は、新しいものにつくり替えられている。上階の小屋裏納戸を居室化するにあたり、床(リビングにとっては天井)を下げる必要があったためである。また、力強い丸太梁が現しになったダイニングからは、既存建物の外周建具を施主がリメイクしたキッチンの食器棚が見える。このように、昔からのものと新しいものがバランスよく同居する、快適な住まいが生み出されている。

緩勾配の側桁階段を上った先の2階は、育ち盛りの子どもたちのためのスペースである。部屋はそれぞれ独立しているが、壁上の勾配天井で緩やかにつながっている。夜は、隣の部屋から漏れる明かりが天井面を柔らかく伝わり、小さな子どもたちもひとりで安心して寝られるようになったという。

この家は、古くから続く地域の小中学校のすぐ近くにある。放課後には、遊びにきた友達の声が楽しく響く。この性能向上リフォームによって、若い子育て家族の生活が地域に根付いたことの意味は大きい。以上から、本作品を一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会会長賞に相応しいものと高く評価した。

*石場建て:民家において礎石(玉石)の上に直接柱を立てるため、柱の下端を礎石の凹凸に合わせる工法。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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