第40回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

入賞者一覧 概要

一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会会長賞【住宅リフォーム部門】

剛な天井

設計会社 M2A+豊橋技術科学大学水谷研究室
施工会社 (株)イトコー
タイプ 持家一戸建
構造 在来木造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

結婚を機に実家から離れた子夫婦が敷地内で酪農を営む両親と共に暮らすために、築約50年の実家を2世帯住宅へと改修した。
無筋基礎に筋交いなし土壁の既存住宅の耐震・断熱性能を向上させ、現代の生活にあったスペックの住宅が求められた。損傷が大きく一部漏水していた切り妻の下屋根を解体し、フラットルーフに模様替えする際に出来た空隙から、風と光を住宅内に取り入れている。既存土壁を解体することなく水平構面を構成するために、真壁を合せ梁で挟み柱部分でアゴ掛け金物を用いて直行する大梁と接合した。この水平構面と全面改修が求められた水廻りを中心に基礎補強を行い耐力壁を配置し耐震補強をした。サッシは全てアルミ複合樹脂サッシに取り換え、床、外壁(一部、内壁)、母屋の天井、下屋根へ断熱材を入れ、断熱改修を行いUA値を 2.86→0.66(w/m2k), ηAC値を 6.9→2.0まで向上させた。
今回の改修によって住環境のみならず、敷地内にある牛舎へ風を届けるなど外部環境も良好にすることに成功し、動物と共存しながら生活する施主たちは大変満足している。

性能向上の特性 断熱・耐震性能の向上
特に配慮した事項 断熱・耐震性能を向上させつつ、通風・採光を最大限確保できるよう工夫した
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 愛知県豊橋市 新築竣工年 1971年 築後年数 52 年 施工期間 200日間
該当工事床面積 91.38 /総工事床面積 117.88 該当部分工事費 2,623 万円 /総工事費 3,330 万円
居住者構成 65 歳以上:2 人 / 40 〜 64 歳:1 人 / 15 〜 39 歳:1 人 / 14 歳以下: 人 / ペット 多数
講評

実家を離れていた息子夫婦が、酪農を営む両親と一緒に暮らすため、築50年余りの実家を二世帯住宅に再生したリフォームである。設計者が教鞭をとる大学の学生が、コロナ渦のため企業のインターンシップができない中、離れの建て替え相談を受けた設計者が、インターンシップの代わりの課題として、学生たちとともに土地活用方法を検討したことから始まった。新築やリフォームなど複数案の中から、母親の思い入れが強かった母屋を残しながら耐震性や断熱性を向上させ、それぞれの暮らしに合わせたリフォームが可能なことがわかり、両親も興味を持たれたことから計画が具体化した。

タイトルにもあるように、この作品の特徴は「天井」である。既存建物は耐震性に乏しく、ほとんど断熱がない状態だった。そこで漏水による傷みが激しかった下屋を解体し、主屋の周りにフラットな天井(下屋)が挿入された。改修する外周部の水廻りを中心に基礎補強と耐力壁を配置し、それらを強度の高い天井(水平構面)で繋ぐことで、既存土壁を残しつつ、内部の間仕切り補強を不要にしている。

またこの天井は大きな小屋裏との断熱境界となっていて、室内との緩衝帯になるとともに内部空間を適正なボリュームに抑えて光熱費を抑える役目も果たしている。さらに天井に設けた明かり取りを介して室内に柔らかな光を届けつつ、建物裏の牛舎に風を通すためのチャンバーにもなっている。

計画には構造や環境系の専門家によるシミュレーションが実施され、その結果通り光や風の流れが得られているとのこと。また施工では地元のリフォームに定評がある工事業者に依頼し、小屋裏の3Dスキャンやプレカットを現場合わせで調整するなど高い品質で工事が行われている。

一見すると屋根の折板や外壁の波板はクールな印象に見えるが、もともと牛舎や周辺の倉庫に使われている材料であり、むしろ景観との調和が図られている。一方内部は補強梁や壁、建具とも構造用合板のあらわしで統一され、残した土壁や土間のたたき等とともに、素材そのもの表情が内と外の連続性を感じさせる。

プランには農家特有の使われ方が反映されており、土足のまま利用できるキッチンや薪ストーブを備えた土間リビングなど、作業着のままくつろげる工夫がなされている。また通り庭や可動キッチン収納など、二世帯交流を図りやすくする工夫も随所に散りばめられている。挿入された天井の効果で、内と外、親と子が緩やかにつながることで、家族の関係や建物の記憶を継承しながらスペックを高めた豊かな場所を生み出している。

年中休むことがない酪農家の暮らしをつぶさに分析し、内外部の曖昧な境界や中間領域の活用に加え、牛舎への風の流れを確保しながら温熱環境を改善する小屋裏活用など、建物の長寿命化とともに、環境と共存する住まい方を提案するリフォームとして、本作品は一般社団法人住宅リフォーム推進協議会会長賞に相応しいものと高く評価できる。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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