第40回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

入賞者一覧 概要

公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞【住宅コンバージョン部門】

土蔵と補う増築

設計会社 澤秀俊設計環境
施工会社 いもと建築
タイプ 持家一戸建
構造 その他
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

【コンバージョンの動機】
・ 築150年の土蔵を、時代にそぐわなくなったと壊すのではなく、現代の暮らしへ適合できるよう土蔵を改修すると共に、省エネ住宅へとアップデートした。
設計・施工の工夫点
・ 敷地は高密度に町屋が密集しているため、日当たりと風通しが悪かった。そこで太陽を捕まえるように背の高い増築をすることで光と熱を取り込み、土蔵内の空気を動かすことを試みた。
・ 夏期は増築棟の最上階の窓を開放することで重力換気を促し、川の冷涼な風を土蔵へ導く。冬期は最上階に集まる暖気を天井部から吸い込み、土蔵の1階床下へ送風する。床下ACによる暖房も適宜併用し、蓄熱性能の高い土蔵内部で保温することで、飛騨のような寒冷地でも快適な住環境を実現した。
施主・居住者の満足度
・ 施主は光熱費が安くなり、エアコン1台で暖かく暮らせると非常に喜んでいる。

性能向上の特性 耐震性能 耐久性能 温熱性能 防音・遮音性能 防犯性能 室内空気環
特に配慮した事項 温熱性能 : 増築部による重力換気の誘発、集熱の暖房利用
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 岐阜県高山市 新築竣工年 2019年 築後年数 4 年 施工期間 360日間
該当工事床面積 98.83 /総工事床面積 98.83 該当部分工事費 3,500 万円 /総工事費 3,500 万円
居住者構成 65 歳以上:  人 / 40 〜 64 歳:2 人 / 15 〜 39 歳:3 人 / 14 歳以下:3 人 / ペット  匹
講評

岐阜県高山市の伝統的建造物群保存地域にある築150年の土蔵を増築し、住宅へとコンバージョンを行った作品である。大火を幾度も経験した高山では、町家の路地裏側に防火帯として土蔵が設けられ、伝統的景観の一部となっている。施主は代々、町家を住み継いできたが、家族が増えて手狭になったため、保存状態のよくない土蔵を取り壊して住宅を新築する予定であった。老朽化した木造部分の置屋根や下屋を解体したところ、壁から屋根まで一体となった塗り壁が頑丈なまま残っていることがわかり、設計者のアドバイスにより住宅として再生することとなった。

土蔵は住環境として考えると、採光と通風の不足が問題となる。また、敷地は町家が高密度に密集しており、壁に開口を設けても日当たりと風通しの大幅な改善は望めない状況であった。そこで、隣接する敷地に土蔵の高さを超える約8mの増築が行われた。木造の増築棟の南立面は上から2/3が窓になっており、そこだけが敷地内で冬至でも直達日射が得られる場所となっている。日頃は土蔵の1階と2階をつなぐ階段室であり、サンルームとしても使われているが、夏季は最上部の窓を開放することで重力換気が促進される。また、外気温が−12℃まで下がる冬季は、ダクトを経由して最上階の暖気を土蔵1階の床下へと送り、床下エアコンと組み合わせた暖房計画が行われている。土蔵の蓄熱性を活かすため、エアコンは秋から春まで自動モードで常時運転し、床端部の吹き出し口から供給される温風はスリットを通じて2階も暖めている。夏季は窓と扉を開放することで、敷地西側の川からの冷涼な風を採り入れるようになっている。

土蔵部分は1階のキッチンと2階のリビングにのみ新規の開口を設け、あとは元からあった開口で必要採光面積を満たしている。また、塗り壁の内部から構造用合板による補強を行うことでIw値1.55となった。土蔵の外装は伝統的な腰板張りと置屋根を採用し、既存の建具や扉の意匠を残しながら景観の保全が図られた。内外装、増築棟には地場産材が用いられているが、間伐材を使用することでコストにも配慮されている。

歴史的景観であっても、現代での役割の薄れた建築物の保存は困難である。土蔵を再活用する事例はこれまでの応募作品にも見られたが、環境装置としての増築棟と土蔵を一体化させ、採光と通風の改善を図る取り組みはユニークである。先祖から受け継いできた土蔵を保存し、法規をクリアしながら、現代の水準に見合った住環境を実現している。伝統的な景観を維持し、日常的に使い続けられる住まいへと生まれ変わったことで、施主の満足度も高い。

以上により、社会のニーズの変化を的確に捉え、建築・住宅ストックの活用例として大いに成功しているものと認められるため、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞に値するものとして評価する。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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