第40回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

入賞者一覧 概要

国土交通大臣賞【住宅リフォーム部門】

築63年木造賃貸アパートの再生 tede

設計会社 (株)アッドスパイス+村上康史建築設計事務所
施工会社 (株)椎口工務店
タイプ 賃貸共同建
構造 在来木造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

改修前はほぼ入居のなかった木造賃貸アパートを今後数十年先も収益を見込める建物へと再生させるため、エリアのニーズに見合うよう改修し、併せて総合的な性能向上を行った。1階は共用部及びワークスペースとして賃貸のできる仕様(木造床による上階の音漏れにも配慮)とし、職住近接型の集合住宅とした。2階住戸は内土間・外土間といった2種類の土間を設け、周辺物件との差別化を図った。著しく不足する長辺方向の耐震要素、露出した設備配管や機器による雑多さを解消するため、掃き出しの開口部と耐力壁をメリハリよく配置した。
立面への変更、PSや設備機器スペースの確保により、耐震性・メンテナンス性の向上及び屋内外における明るさを確保している。
また新規断熱材とサッシ取替えによる断熱性向上、防火関連の適法化など、総合的に性能向上を行い長期的に不動産価値を維持できるように計画した。このように安全性と快適性と高めた上で、周辺物件とは差別化した住戸プランや共有部の整備・時間の蓄積を生かした空間づくりを行い、新築にはない魅力を持った賃貸住宅とした。改修後は継続的な入居があり、安定的な運営を実現している。

性能向上の特性 耐震性能、温熱性能、耐久性能、防火性能、防音・遮音性能、室内空気環境
特に配慮した事項 基礎全面補強、UA値2.88→0.64 ηAC値7.7→2.4へ向上、屋根葺き替え、サッシ取替 による断熱性向上、住戸間の界壁等防火関連の適法化、住戸間の界壁と床の遮音化、 24時間換気設置、家賃価格の増額及び新規入居者による資産価値向上
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 京都府京都市 新築竣工年 1960年 築後年数 63年 施工期間 390日間
該当工事床面積 187.85 /総工事床面積 187.85 該当部分工事費 4,450 万円 /総工事費 4,450 万円
居住者構成 65 歳以上:  人 / 40 〜 64 歳:2 人 / 15 〜 39 歳:2 人 / 14 歳以下:  人 / ペット 匹
講評

日本の各地に数多く建てられてきた木賃アパート。昭和の昔からドラマや映画において、一人暮らしの舞台としてもしばしば撮影の現場となり、登場人物が鉄骨の外階段・外廊下を寂し気な音を立てて帰ってくる場面など、日本人なら誰もが知る典型的な風景をつくってきた。1960年代から1970年代にかけての高度経済成長期に多く建てられた木賃アパートも、そのまま建っていれば、今や築50〜60年程度の古屋になっている。各戸に浴室を持たないそれらのアパートは多くが建替えを考えるような対象になっているだろうが、予算や市場の関係からそうたやすく建替えられないケースも少なくないと考えられる。それでは、これらの陳腐化した古アパートをどうすれば良いのか。

本作品は、まさにそうした日本中にあるだろう古アパートを、見事に生まれ変わらせた例として高く評価された。

施主は複数の賃貸物件を管理していて、表層の改修をしただけでは近隣の賃貸市場での競争力に欠けるのを懸念していたところ、不動産プランナーや設計者と協働することで周辺のニーズを掘り起こし、大規模にスケルトン改修を行うことで、魅力的な賃貸アパートに生まれ変わらせた。

具体的には、近くに芸術系の大学があることからアトリエ併設の賃貸住宅を企画し、居住用の部屋を2階に限定し、1階を貸しアトリエ数戸と共用のラウンジにすることで、木造アパートの弱点である遮音性の低さをカバーしながら、一般居室以外にも魅力ある特徴的な空間を実現した。1階の中央に配置されたラウンジは2階の居住者も利用できるようになっており、イベントや交流を生み出す仕掛けにもなっている。これらによって 周辺のワンルーム・アパートにはない魅力づくりができたわけだが、仲介業者を限定することで、この魅力を理解してくれる入居者−芸術系大学の学生や関係者等−を募集する形をとった。施主の説明では、約15年で今回の投資は回収できる計画だという。

ハード面でのリフォームの内容に関しては、先ず、住宅医でもある設計者がインスペクションを行い、それに基づいて、プランの見直しによる適切な耐力壁配置と、スケルトン・リフォームによる耐震補強を実施した。これによって、今後の長寿命化の基礎ができたと言える。更に、開口部を樹脂複合サッシに更新することで、防火性、断熱性の格段の向上と適法化が図られた。2階の各住戸には、面積が限られているため、シャワー・ブースを新設するにとどめ、他方で居住者がそれぞれの使い方を工夫できる土間スペースを設けることで、居住の楽しみを加えている。

コストを抑えながらこれだけの性能向上を図るために、改修計画自体はメリハリが効いており、既存利用部分はレトロな雰囲気のグレー色で塗装し、床に明るいレンガを敷き詰めることで、暗かったイメージを一新する等、ここにも設計上の効果的な工夫が見られる。

以上より、本作品は国土交通大臣賞に相応しいものと評価できる。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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