第39回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

コンクール総評 入賞者一覧 概要

公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞【住宅リフォーム部門】

管種の異なる共用部分全排水管の一斉樹脂化を通じた長寿命化の試み

設計会社 野村不動産パートナーズ(株)
施工会社 同上
タイプ 持家共同建
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

リフォームの動機:横主管を含めた排水管の全面改修
 ・高齢化の進む管理組合より、将来不安のない工事の要望
 ・部分改修によるロスなどあり、異なる管種を全て同時改修
設計・施工上の工夫
 ・国土交通省モデル事業へ応募・採択(横主管資金捻出)
 ・排水管・通気管のオール樹脂化⇒築100年迄更新不要
 ・全系統と横主管の接続に小口径枡設置(メンテナンス)
 ・立管・地下ピット内横引き管掃除口設置(メンテナンス)
 ・一斉更新による新設時の勾配不良の解消
 ・仮設トイレのエコトイレの採用&簡易トイレの全戸配布
 ・地下点検口のリフォームによる塞いだ事例への対応
   →全三戸、区分所有者と協議し工夫しながら実現
 ・将来に向けて意志を繋ぐメンテナンスのしおり全戸配布
 ・残された給湯銅管の区分所有者対応の仕方を明示
施主の感想・満足度:工事後、理事会より表彰状授与
 ・工事への評価・将来への不安感の解消→表彰へ

性能向上の特性 耐久性能(排水管の長寿命化へのトライ)
特に配慮した事項 排水管の築100年までの更新工事不要化と将来メンテナンスに向けた施工配慮とメンテナンスのしおりの全戸配布による区分所有者への啓蒙活動
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 東京都大田区 新築竣工年 1982年 築後年数 40 年 施工期間 122日間
該当工事床面積 687.11 /総工事床面積 687.11 該当部分工事費 9074 万円 /総工事費 9074 万円
居住者構成 65 歳以上:100 人 / 40 〜 64 歳:30 人 / 15 〜 39 歳:25 人 / 14 歳以下:20 人
講評

築40年、住戸数90戸の分譲マンションの排水管更新工事である。共用部分排水管は、更新時期を迎えている銅管の他に、更新時期の異なる管種が混在しており、対処療法的な漏水対策工事を行っている状態であった。築40年前後は、3回目の大規模修繕工事と重なり、修繕積立金が不足しがちである。部分的な更新を何度も重ねることは経済的ではなく、居住者の負担も大きい。さらに、新築当初からの区分所有者が大半を占め、高齢化していることから、一時金徴収なく維持していくことを目指して修繕計画の見直しが行われた。大規模修繕工事の経験者や理事経験者からなる修繕委員会が立ち上げられ、管理会社からの提案を受けて、横主管・通気管を含めた共用部分の全排水系統の配管を、今後60年間更新が不要となる最新仕様の樹脂管へ一斉交換することが選択された。屋上防水の補修工事が絡む排水管更新工事を先行させて大規模修繕工事を後送りしたことで、工事の回数が削減され費用的にも実施が可能となった。

更新工事内容は、専有部分からのアクセスの必要な地下ピット内部、1階廊下の下部にある地中埋設配管、各専有部分のトイレ配管までが対象となった。要所に小口径枡や掃除口を増設し、メンテナンス性を高めることで修繕工事の頻度軽減が図られた。4ヶ月間の工期中は断水や各住戸への立ち入りが避けられないが、管理組合が様々な世代の所有者・住人に向けて棟内掲示板、メール、対面の総会や説明会、web会議等を駆使して丁寧に説明を行ったことで、全員の承諾を得て工事が進められた。断水期間中は仮設バイオトイレの設置や簡易トイレの全戸配布が行われ、断水は日中のみとするなど不便を最小化する工夫が図られた。また、国土交通省のマンション長寿命化モデル事業の補助金を活用することで費用負担が軽減された。

工事完了後は、給排水設備の管理状態を60年間維持していくための注意点をまとめたしおりが全住戸に配布された。工事に対する居住者の満足度が高かったことで、その後駐輪場・駐車場の整備へと議論が進み、実施に至っている。さらに、植栽や防災など、マンション居住をより良くして行こうという居住者の意欲が高まっているとのことである。

築古マンションでは、住人・所有者の高齢化率も高くなっていく。大規模修繕に当たっては、管理組合の役割が重要であり、入れ替わっていく次の世代への管理履歴やノウハウの継承が課題となっている。大規模修繕の規模や回数を減らすことはメリットが大きい。また、各住戸の資産価値を高めることは、老後の資金不安を軽減させることにも繋がる。

本工事は、マンションの管理組合と管理会社が修繕委員会での検討を重ねることで相互の理解を深め、一体となって取り組んだ成果であり、マンションストックを活用していく上で広く参考となる取り組みである。よって、本作品は住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞に値するものと認める。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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