独立行政法人 住宅金融支援機構理事長賞【住宅リフォーム部門】
金石町家つなぎプロジェクト
| 設計会社 | 北村陽子けんちくアトリエ |
|---|---|
| 施工会社 | (株)夢工場 |
| タイプ | 持家一戸建 |
| 構造 | 在来木造 |
リフォームの動機/設計・施工の工夫点など
新居を構えようと希望の地域で土地を探したところ、予算や規模に見合うものの多くが古い町家付きの土地ばかりだった。金沢市内では年間約100棟の町家が解体されている。町家の温熱性能や耐震性を向上させることで良質な住宅ストックとして保全活用できると考え、脱炭素の住まい方提案として町家を購入・改修することにした。
曳家・揚屋を行わずに基礎をRCに全面改修し、上部構造を緊結させた。床下点検空間を確保し、劣化防止・維持管理に配慮した。
床・壁・天井をまるっと高性能断熱材で覆い、開口部には樹脂複合アルミサッシ+Low-Eペアガラスを採用、断熱区画が切れない計画とした。
伝統的な意匠や造作を継承し、新しい材料との調和を試みた。
1階の中庭まわりに佇むための居場所を点在させ、コンパクトな平面でありながら、時間や気分に合わせてお気に入りの居場所を見つけては暮らしを愉しんでいる。町家暮らしは寒い・暗い・狭いを我慢することが求められがちだが、性能向上リフォームにより、古い暮らしを強いられるのではなく、現代のスタイルのまま暮らすことができることを提案した。地域との協働で若い世代からの関心も高まった。
| 性能向上の特性 | 温熱性能、耐震性能、耐久性能、室内空気環境、気密性能、バリアフリー性能 |
|---|---|
| 特に配慮した事項 | UA値0.65、ηAC値1.5ηAH値1.3、基礎全面改修、床下確保、水廻構造材全取替、既存サッシ全取替、内装:能登産珪藻土340�垰藩僉�ビニル系仕上材料未使用 |
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
| 所在地 石川県金沢市 | 築後年数 約80 年 | 施工期間 210日間 | |
| 該当工事床面積 105.15 �� /総工事床面積 105.15 �� | 該当部分工事費 2460 万円 /総工事費 2460 万円 | ||
| 居住者構成 65 歳以上:0 人 / 40 〜 64 歳:0 人 / 15 〜 39 歳:2 人 / 14 歳以下:2 人 | |||
講評
年間100棟以上の町家が解体されている金沢市において、築80年となる町家の温熱性能や耐震性能を現行基準の水準まで向上させて、良質な住宅ストックとして保全している作品である。昔ながらの町家を復元することで古い暮らしを強要するのではなく、現在の生活スタイルで暮らすことを提案した町家の再生モデルであり、地域の若い世代からの関心も集めている。
リフォームはできる範囲で性能を向上させ、性能とコストのバランスを取りながら進められた。一方、「寒い」や「暗い」という町家のイメージを一新させて、若い人にもこれであれば住みたいと思える新しい価値を生むことが目標に設定された。その結果、町家の伝統的な造作を残し、新しい中にもどこか懐かしさを感じる家族の居場所になっている。
基礎は、添え梁や支保工で上部構造を保持し、柱脚部分を浮かせた上でRCのベタ基礎に全面改修している。また耐震性能は、耐力壁を短辺方向に分散して配置し、柱頭柱脚金物を全数取り付けるなどして構造耐震指標Is値が0.1から1.03に改善している。
敷地境界線付近に隣家があり外壁工事が困難であったため、温熱性能の向上には、室内側から内張の断熱を行っている。屋根は既存のままとして室内側から屋根断熱とし、外皮平均熱貫流率UA値は0.65 W/(m2・K)を達成している。今後、屋根瓦を改修する時に縁側の天井断熱を実施することを予定しており、その場合、0.59 W/(m2・K)まで性能を向上させることを計画している。
また、住宅内で気密測定を実施しており、室内を加圧して空気が漏れる箇所を特定し、当該部分を気密テープや隙間材で塞ぐ工事も実施している。消費エネルギーは以前の住宅に比べて低くなり、4人家族の標準値よりも低く抑えられている。冬はペレットストーブ1台で家中が暖かく、施主は結露やカビの発生がないことに大変驚き、家族の満足度は高い。
2階洋室の壁面収納の中段に木格子を設置して吹抜とし、2階から下階に光を落とすことで、暗かった1階の廊下を明るい空間に変えている。また、1階の中庭回りを取り巻くように水回りをゾーニングし、料理のほか、読書、裁縫、仕事、子供の勉強などをする居場所を点在させて、住宅内で家族それぞれが独立した動きをしやすくしている。中庭に面する縁側ではソファに腰掛けて、中庭の四季を愉しんだり、読書をしたり、心地よい時間を過ごすことができる。
道路に面する1階入口ファサードには町家の雰囲気を残す格子戸を新設し、室内建具と組み合わせることで日本海からの強い海風を一旦弱めてから住宅内に流す通風計画としている。また、玄関前にポーチ空間を設けることにより、冬の風雪の吹き込みを防止している。
以上のように、本作品は、リフォームにより大幅に温熱性能や耐震性能等を向上させ、工夫して設けた吹抜等が良質な住空間を創り、快適な生活が実現しているため、独立行政法人 住宅金融支援機構理事長賞に値するものとして評価する。


























