第39回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

コンクール総評 入賞者一覧 概要

国土交通大臣賞【住宅リフォーム部門】

木の家は木で治す。土壁の家は土で治す。府中の家

設計会社 トヨダヤスシ建築設計事務所
施工会社 (株)建築工房en
タイプ 持家一戸建
構造 在来木造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

介護施設で暮らす妻を自宅で介護出来るようにとリフォームを希望されたご主人と、老々介護を心配した名古屋で離れて暮らす娘さんの想いが一致し、高断熱化とバリアフリー化を重視した性能向上リフォームを行うことになりました。室内をすべてバリアフリー化するとともに、車椅子のタイヤについた土を拭いてから部屋に入れるように、玄関から繋がる、床とフラットな土間スペースをダイニングに計画しました。住宅医のインスペクションによって、既存家屋がしっかりした造りの土壁の木造であると把握出来たため基本方針を「土の家は土で治す」とし、既存土壁の蓄熱性を生かす区画断熱改修を行いました。なるべく既存土壁を壊さず屋外側から断熱補強し、室内側は「既存土壁の上から木小舞土塗り」の手法を取ることで、室温と湿度をコントロールかつ安定させる試みをしました。改修後、間取りや温熱的な快適性が向上したことで離れて暮らす娘さんも実家に帰ってきたいという意向があり、将来に受け継がれる価値ある改修にもなりました。

性能向上の特性 温熱性能、バリアフリー性能、室内空気環境、耐震性能、耐久性能
特に配慮した事項 区画断熱範囲のみ:Q値1.87W/K、UA値0.44W/K、Q*1.44W/K、熱容量147.47kJ/W/Kに向上。
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 和歌山県和歌山市 新築竣工年1992年 築後年数 30 年 施工期間 210日間
該当工事床面積 144.02 /総工事床面積 199.54 該当部分工事費 2855 万円 /総工事費 3956 万円
居住者構成 65 歳以上:2 人  / 40 〜 64 歳:0 人  / 15 〜 39 歳:0 人  / 14 歳以下:0 人
講評

本作品は、木と土壁を用いた木造住宅の総合的な性能向上リフォームである。
妻の介護をきっかけに、当初はバリアフリー改修をメインに考えていた施主に対し、離れて暮らす子が伝統工法に詳しい設計者をインターネットで探し当て、将来的に子や孫世代が住み継げるよう、断熱性能や耐震性能をトータルにカバーする性能向上リフォームに発展したという。

30年前に縁戚の大工が1年かけて建てた建物は、大きな梁組と土壁によるしっかりとした造りではあったが、壁量が不足している心配があった。そこで計画にあたっては、「住宅医」でもある設計者による詳細なインスペクションが行われ、既存建物の課題を確認するとともに、施主や当時の大工のこだわりを受け止めて、伝統を受け継いだ現代の住まいにアップデートされている。
室内は車椅子生活に対応するため、建物内のバリアフリー化を進めるとともに、広い建物の1階と階段部分を断熱区画として設定することで、引き戸を開けるとすべての部屋がゆるやかにつながる一体感のある住まいが生まれている。不足していた南面間口方向の壁量を補いながら玄関の入り方を変え、ダイニングの一部を大理石張りにすることで、車椅子での出入りや清掃を容易にしている。開口部には木製建具を製作し、防犯と通風のための木製格子戸を設けるなど、木と土の温かみある優れたデザインがなされている。

なかでも、土壁による安定した室内温熱環境の効果は大きいものと評価される。一般に土壁は蓄熱や調湿効果に優れる反面、誤った断熱・気密化で内部結露が発生する恐れがあるが、ここでは外側に断熱層を設けることで防湿フィルムを省略し、さらに非定常計算でも内部結露が生じないことを確認している。既存の土壁にさらに土壁を重ねることで、安定した室内環境が得られることを各種シミュレーションで検証し、完成後も実測を行ってその効果を把握している点は、伝統工法の再評価と土壁活用のモデルとなるであろう。

予算の都合で2階は二期工事とされたが、工事箇所を絞った効率的な耐震補強が行われている。コストを踏まえた工事計画や将来を含めた住まい方の提案まで行われたとのことで、施主の信頼も厚く、満足度が高いことがうかがえる。
完成後は、親元を離れて近くの学校に通う孫が同居しており、子も週の半分テレワークで帰宅するようになったそうで、いずれはこの家に戻ってきたいと考えるようになるなど、住み継がれる価値のある住宅になっている。

以上のように、伝統工法を用いながら、今日求められる性能とデザインを両立した本作品は、国土交通大臣賞に相応しい優れた作品である。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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