第38回住まいのリフォームコンクール 入賞作品

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国土交通大臣賞【住宅リフォーム部門】

千客万来庵〜新しくて懐かしい、床座と土間キッチン

設計会社 (有)祐建築設計事務所
施工会社 東海住宅販売(株)
タイプ 持家共同建
構造 鉄筋コンクリート造
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リフォームの動機/設計・施工の工夫点など

息子の独立で、二人暮らしに戻ったのを機に、共働きの忙しい生活の中だからこそ、ゆったりとした暮らしを楽しめ、友との交流も促せる、開かれた心地よい場創りを考えた。
ルーフバルコニーを庭に見立て、玄関から庭に抜ける土間を創り、土足で使うキッチンを設えた。多勢の会食では、庭でBBQ、準備と片付けも来客と共に土間キッチンで行う。最初から最後までの土足での活動が、より深いコミュニティを醸成している。
一方、土間沿いは板敷とし、四半世紀使ってきた座卓を据えた、日本古来の床座主体の暮らしは、昔の農家の如くである。
はたきと箒で掃除をし、砂時計を使って料理する、新しくて懐かしい生活が展開している。床から天井までの収納と本棚は、安価なMDF無垢材、施主と友人で塗装をし、空間とも友とも愛着を深めた。
三方開口の角部屋がワンルームになり、通風は抜群。
外壁のウレタン吹付、内窓に障子を設え、断熱も大幅に改善。
コロナ禍で、より人との繋がりの重要性を感じるようになった今、ゆったりとした暮らしと友との交流を深める「千客万来庵」である。

性能向上の特性 外壁断熱材、内窓障子設置。
ワンルーム化による3面開口で通風確保
特に配慮した事項 バルコニーに続く土間に置かれた開かれたキッチン。CO2削減のため、ビニール系仕上げ材を排除。緻密な収納計画と、家具による間仕切。
リフォーム前
リフォーム前後の平面図

物件概要
所在地 福岡県福岡市 新築竣工年1994年 築後年数 27 年 施工期間 90日間
該当工事床面積 67.08 /総工事床面積 67.08 該当部分工事費 1100 万円 /総工事費 1100 万円
居住者構成65 歳以上:0 人 / 40 〜 64 歳:2 人 / 15 〜 39 歳:0 人 / 14 歳以下:0 人 /
講評

共働きで忙しい夫婦の子育て期が過ぎ、ゆったりとした友との交流を楽しむために行ったリフォームである。この住宅のエリアは子育ての生活利便性が高い地域だと判断して、新築で四半世紀前に購入している。当初から広いルーフバルコニーは子育て期だけでなく将来も役立つだろうと思っていたようだ。子供は9年前に独立して少しずつ夫婦二人での生活を考えた時に、次のライフステージとしてもこの便利な立地とバルコニーを活用した生活が最適だと判断し、継続居住を決断してリフォームとなった。そして構想5年の試行錯誤を経てこの間取りが実現している。設計者は施主の配偶者であり、施主もまた建築の仕事に携わっている。夫婦はこれからの社会を考えると閉鎖的な集合住宅に疑問を持ち、人との繋がりを重視して家の一部を開きたいと思っていた。
このプランの特徴は「土間」である。土足のまま移動して玄関からバルコニーまで続く「道」ができた。その途中には炊事場があり、厠があり、床座主体の暮らしとともに昔の農家を思わせる作りが魅力的である。近年のリフォーム例では玄関を広くする事や、バルコニー側に新たに仕切りを設置してドライエリアにするなど、外部とのつながりで利便性を向上するプランが見受けられる。その流れの中でもこの解放的な伸びやかさは思い切った判断だといえるだろう。
室内は空気環境を意識した無垢材の床や自然塗料の利用、そして紙や布などの柔らかい素材と土間やキッチンの硬い素材とのコントラスト。それらによる懐かしい温かみある雰囲気が、人が来やすい親しみが湧く場所として成功している。
バルコニーは共用部なため改修はしていないが、外周部壁の屋内側にウレタンを吹き付け隙間なく断熱し、開口部には内障子を設け温熱性能を向上させている。ワンルーム化で通風が向上しエアコンの稼働率も低くなった。床の遮音は土間部分も含め全て乾式2重床とし、土間には仕上げにタイルを貼っている。最も振動が発生する解体時も階下への影響を減らすため、既存の直貼フローリングは撤去せず、その上に乾式床下地を施工。フローリング部はキッチンと絡めて床を上げ排水ルートを確保したことで、階高が低かった27年前の住戸でもアイランドキッチンが成立できた。しかもこの段差は、靴を脱ぐという行為により境界の役目を果たし、プライベートエリアとの区分にもつながった。
造作家具には費用がかかったが、塗装工事は施主と友人とで行い、あとから変更できる建具はスクリーンを利用するなどして低コストも実現できた。住戸の半分以上が見渡せるシンプルな空間は、ゆるやかな仕切りとともに物の分量と収納場所を適切に計画した事で成り立っている。何を重視して計画するかの判断が大事であることに改めて気づかされる。実際に集会などに開放することもあり、以前よりも掃除をして道具類を探す楽しみもできたようだ。
コロナ禍で外出自粛が多い中、このように広いバルコニーではなくとも、ゆとりをもたらす造りとしてどの世代にも参考となろう。さらに地域コミュニティが重要な役割を果たす少子高齢化や災害が多発する時代に、日常的にコミュニティ醸成を試みた例として高く評価できる。以上のように本作品は国土交通大臣賞にふさわしい優れた作品である。

※受賞案件の設計・施工に表示される組織名・会社名などは受賞当時のものを表示しています。
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